青空の卵・仔羊の巣・動物園の鳥

青空の卵 (創元推理文庫)仔羊の巣 (創元推理文庫)動物園の鳥 (創元クライム・クラブ)
坂木司には引きこもり気味の友人鳥井慎一がいる。
鳥井は坂木が連れ出さない限り外に出ようとしない。
彼が引きこもりになったのは家庭環境と中学時代のいじめのため。
そのため鳥井は非常に精神状態が不安定になる。
坂木は外界との接触を切っている鳥井を世の中に出したいと思っている。
そして坂木は町であった不思議なことを鳥井に語る。
鳥井は並はずれた観測眼と推理力によってもつれた糸を解きほぐす。
そしてだんだん知りあいが増えていく。
知りあいに成る内で木村栄三郎の造形がいい。
この人以外にも中川夫妻の間の機微が凄い。
この作家はいくつくらいの人なんだろう。こういう人物たち出せるって凄いと思う。
推理小説だけれど,殺人が起こるわけではなくて,ちょっとした事柄。
その事柄が何ともいい感じ。
「動物園の鳥」では,鳥井をいじめていた人物が出てくる。こういう人物いるのかな。σ(^^)の周りにはこういう考え方する人っていないような気がするが。しかし,彼に乗せられて一緒にいじめに加わる人たちの方がσ(^^)は許せない。
また,二人の友人である滝本の妹が出てくる。
豪放磊落に見える滝本にも微妙な家庭の問題が有ることが解る。
二人の関係を鳥井は「あいつは,守っているつもりでその相手にすがっている」という。
これを聞いて坂木は決意する。彼は以前から自分が何故鳥井といるか考えていたのだ。
そして坂木は鳥井に「この部屋には来ない,来て欲しいなら迎えに来て」という。
最期はほっとする終わり方。
いい話読んだわ。
「仔羊の巣」の解説のひとが鳥井の言葉の使い方はいやだ。と書いてある。σ(^^)もどうもだめ。
解説の人はそれは坂木のように優しくない為だろうという。
σ(^^)もそうなんだろうな。鳥井のすべてを受け止めるだけの優しさが無いのだろう。
すべてを受け止められる坂木がいる鳥井は幸せだと思う。