臨場

臨場

臨場

「終身検視官」の異名を持つ倉石。倉石が遠景のように出てくる短編集。
他の者たちとは異質の「眼」を持つ彼。
彼は他の人々とは違う物を見ているのか。
最近横山さんの警察物少々読んでいて楽しく無くなるような警察の暗部のような物が多すぎるような気がして。
多少はそういうところも面白いと思うこともあるけれど,多すぎると鬱陶しくなってくる。
でも,この話はよかった。
警察の暗部も有るけれど,程々でこのくらいなら楽しめる範囲。
倉石のキャラクターがいいわ。
警察庁で指紋検査している人に聞いたけど,どうも警察で検視官になるコースってよく分からないわ。
で,倉石がずっと検視官やっていることを気にくわない人々と,倉石を尊敬している人々。
そういう人の中で,死者の声を聞く倉石。
倉石の検視の中で一番印象的だったのは,有る寝たきり老人の死を自殺と判断した理由。
彼の部屋がにおわなかったから。つまりいかに彼が家族に大事にされていたかが,部屋が臭わなかったことで解るというのだ。なるほどなと思わされた。
また,彼は黒星つまり失敗がなかったのだが,黒星と解っていながら昔の部下の死を最初は犯罪と判断して,彼女の過去を調べさせる。部下たちは彼女が自殺だと言うことは解っていたが,彼女の生きていた証を見つけるために働く。
いい話だった。
倉石のキャラクターちょっと帰れば本格物の探偵に成ると思うけど,しないところが横山秀夫の作品なんだろうな。
面白かったわ(^。-),