逃げゆく物語の話

逃げゆく物語の話 ゼロ年代日本SFベスト集成<F> (創元SF文庫)
さすがに10年間の集大成だけあってどの作品も読み応えがあった。いくつか読んでいたものはあったけれど、それらもいい作品だった。しかし、恩田陸のこの作品。なんでこれが選ばれるのだろう。不思議だ。もっと違うのもあると思うのだが。この作品に不満があるわけではないのだが。
乙一の「陽だまりの詩」が良かったな。たった一人生残った人を世話するために作られたロボット。彼は一人残される事の寂しさ切なさを学んでいく。しかし人と思っていた主人は彼もロボットだった。一人残ることに耐えられず彼を作ったのだ。彼もまたロボット作るのかな。なんとも、余韻の残る話だった。
森岡さんの「光の王」はなんともいえない。滅びてしまった人類。それを惜しんだ異星人がデータとして人類を保存する。しかし、滅びたことを思い出してしまった主人公はそのデータの中から削除される。普通のオジサンなのに思い出しちゃったのね。面白い話だ。
山本弘はやっぱりいいわ。凄い発想だ。宇宙が出来たのは7日前。自分が知っていた恋人は自分の妄想なのか。本当に宇宙は後数日で滅びるのか。いやいやなんともいえない。
牧野治の「逃げゆく物語の話」は世論によって本が規制される話だ。こういう世界がこないことを祈ろう。