ジェネラル・ルージュの凱旋

ジェネラル・ルージュの凱旋

ジェネラル・ルージュの凱旋

この話のはじまりは「ナイチンゲールの沈黙」と同じ。
田口はバチスタ手術中の死を解決したことから気が付いたら病院の出世頭と見なされている。そして,彼が委員長をするリスクマネジメント委員会宛に怪文書が届いた。それは救命級センター部長の速水が業者と癒着しているという物だった。
田口はこの問題を倫理問題審査会にもちこんだ。この委員長沼田は田口を目の敵にしていたしていた。そしてこの人はなんだかんだと理屈をつけては医師たちの研究を認めない。
そしてまたまた白鳥の乱入。
この人の口先の素晴らしさ。
でも,これに圧倒されるのは何時も空虚な理屈ばかり述べる人たちばかり。
今回は非常に気持ちがいい。
今回一番かっこよかったのは黒崎教授。
さすがに沼田と違って技術が必要な外科の教授をしているだけのことはある。
医療にとって一番必要な物を知っている。
理屈だけで世の中わたっている人たちとはひと味も二味も違う。
そして最後のクライマックスの迫力。
最高だわ。
でも,この話を読んで感じるのは危機的な状態にある医療のこと。
今,医療も採算性を求められている。
しかし採算性など取れない部門もある。
それが小児科と産科と救急救命部門。
少子化をどうするかといっているけれど,小児科医が少なくなっている理由ははっきりしている。そして産科。つい最近も妊婦のたらい回しが問題になった。
産婦人科医を攻められる問題ではない。
そしてここで問題になっている救命救急部門。
ドクターヘリを導入したい速水。だが採算性が取れないと言うことで却下されている。
それどころかこの小説の中では小児科と救命救急部門が赤字部門として切り捨てられている。そして足りない予算のために裏金を作る速水。
実際もそうだ。救命救急が金食い虫なのは当然の事。
だが,ここが無くなったらどうなるんだろう。
実際無くなっているところもあるのかな。産科や小児科のように。
採算の問題ではないのだ。
私達の命の問題だ。
非常に考えさせられる小説だった。
でも,非常に読みやすかった。